「なんで意地悪するの?」の答えは、発達心理学にありました ― “相手の気持ちがわかる力”(心の理論)は、いつ・どう育つ?
「なんで意地悪するの?」の答えは、発達心理学にありました ― “相手の気持ちがわかる力”(心の理論)は、いつ・どう育つ?
こんにちは、仙台のベビーシッターサービス「Family Sitter」です。
お友だちのおもちゃを取ってしまう。順番を待てずに割り込んでしまう。「痛かったでしょ!」と伝えても、きょとんとしている――。2〜3歳のお子さまと過ごしていると、「うちの子、意地悪なのかな」「しつけが足りないのかな」と不安になる場面があるかもしれません。
でも、発達心理学の研究は、少し違う見方を教えてくれます。今日は土曜のコラムとして、「心の理論」と呼ばれる”相手の気持ちがわかる力”の育ちについて、研究をもとにやさしく読み解きます。夏休みで、きょうだいやお友だちと過ごす時間が長いいまの季節にこそ、知っておいてほしいおはなしです。
「心の理論」ってなに? ― “相手には相手の心がある”とわかる力
「心の理論」とは、相手の気持ちや考え、意図を推測して理解する力のことです。「自分はこう思っているけれど、相手は違うことを考えているかもしれない」――大人にとっては当たり前のこの感覚、実は生まれつき備わっているものではなく、幼児期にゆっくり育っていくことが、長年の研究でわかってきました。
「相手の立場に立って考える」「気持ちを察する」「思いやる」。私たちが子どもに願うこうした姿は、すべてこの”心の理論”を土台にしています。つまり、思いやりは「教え込むもの」である前に、「育つのを待つもの」でもあるのです。
有名な実験「サリーとアン課題」― 4歳ごろに訪れる、心の大きな節目
心の理論の育ちを調べる方法として、世界中で使われてきたのが「誤信念課題」と呼ばれるテストです。中でも有名なのが「サリーとアン課題」。こんなお話を子どもに聞かせます。
サリーがビー玉をかごに入れて、部屋を出ていきます。その間に、アンがビー玉をかごから箱へ移してしまいます。さて、戻ってきたサリーは、ビー玉をどこで探すでしょうか?
正解は「かご」。サリーはビー玉が移されたことを知らないからです。ところが、3歳ごろまでの子どもの多くは「箱」と答えてしまいます。自分が知っていること(ビー玉は箱にある)と、サリーが知っていること(かごに入れた)を、まだ切り分けられないからです。
研究では、この課題に正しく答えられるようになるのは、おおむね4歳を過ぎたころからとされています。ただし、ここはとても大切なポイントですが、育ちのペースには個人差が大きく、文化による違いもあると報告されています。日本の子どもは欧米の子どもよりゆっくりめという研究もあり、「4歳になったのにできない」と心配する必要はありません。
2〜3歳の”意地悪”は、意地悪じゃない
この研究が教えてくれるいちばん大きなことは、2〜3歳の子どもが「相手の気持ちを考えずに」ふるまうのは、性格でも、しつけの失敗でもないということです。
おもちゃを取ってしまうのは、「相手も使いたがっている」という”相手の心”が、まだ見えていないだけ。譲れないのは、わがままというより、自分と相手の気持ちを切り分ける力が育ちの途中だから。大人の目には”意地悪”に映る行動の多くは、発達の通り道なのです。
そう考えると、けんかの場面での関わり方も少し変わってきます。「取っちゃダメでしょ!」と叱って終わるのではなく、「〇〇ちゃんも使いたかったんだって」と、相手の気持ちを”通訳”して聞かせてあげる。まだ自分では見えない相手の心を、大人がことばにして見せてあげることが、心の理論の育ちを助けると考えられています。
“心が見える力”は、日々の会話で育つ
では、この力はどうすれば育つのでしょうか。研究が示すカギのひとつは、「気持ちについての会話」です。
「くやしかったね」「うれしいんだね」「びっくりしたね」――自分の気持ちに名前をつけてもらう経験。「この子、どんな気持ちだと思う?」と絵本の登場人物の心を一緒に想像する時間。家族の中で交わされる、こうした”心の話題”の積み重ねが、目に見えない気持ちの世界に輪郭を与えていきます。
日本の保育の指針でも、この方向性は大切にされています。保育所保育指針では、保育士等が子どもの表情や声から気持ちを汲み取り、十分に受け止めながら「応答的に関わる」ことが重視されていますし、幼稚園教育要領でも、自分の気持ちを言葉で表現する経験や、友達と関わる中で相手の思いに気づいていく過程が、幼児教育の中心的なねらいに位置づけられています。
特別な教材はいりません。夏休みのおうち時間にできることを、いくつかご紹介します。
- 絵本を読みながら「この子、いまどんな気持ちかな?」とひと言添える
- 寝る前に「今日いちばん楽しかったことは?」と気持ちをふり返る
- パパママ自身の気持ちも「ママ、うれしかったよ」と言葉にして伝える
- きょうだいげんかでは、双方の気持ちを”通訳”してあげる
- ネガティブな気持ちも「そう感じたんだね」と否定せずに受け止める
ポイントは、うまく言えたかどうかより、「気持ちには名前がある」「気持ちは人それぞれ違う」という感覚が、会話の中で自然と染み込んでいくことです。
夏休みの”ぶつかり合い”は、心が育つチャンス
夏休みは、きょうだいやお友だちと長く一緒に過ごすぶん、ぶつかり合いも増える季節です。連日の「取った」「取られた」に、ため息をつきたくなる日もあると思います。
でも、見方を変えれば、ぶつかり合いこそ「自分と違う心」に出会う練習の場。そのたびに大人が気持ちの通訳をしてあげることで、子どもは少しずつ、相手の心を想像する力を積み上げていきます。今日のけんかも、思いやりが育つ途中経過かもしれない――そう思えると、少しだけ気持ちが軽くなりませんか。
なお、お子さまの人との関わりや発達について気になることが続く場合は、ひとりで抱え込まず、かかりつけの小児科医や、仙台市の子育て相談窓口など、専門家への相談もご検討ください。心の理論の育ちは個人差がとても大きいものですので、この記事の年齢はあくまで目安として受け取っていただければと思います。
Family Sitter より ― 気持ちに、ちゃんと応える保育を
Family Sitterのシッターは、1対1の保育だからこそ、お子さまの小さな気持ちのサインに気づき、「〇〇したかったんだね」と受け止める関わりを大切にしています。遊びの中の「うれしいね」「くやしかったね」のやりとりひとつひとつが、お子さまの”心が見える力”の栄養になると考えているからです。
パパママがひと息つく時間づくりも兼ねて、仙台・宮城の子育てに、どうぞお気軽にお声がけください。
参考にした情報
- 脳科学辞典「心の理論」 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/心の理論
- J-STAGE『発達心理学研究』誤信念課題に関する論文 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/16/3/16_KJ00004014470/_article/-char/ja/
- 保育所保育指針解説(こども家庭庁掲載)第2章 保育の内容 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/eb316dce-fa78-48b4-90cc-da85228387c2/dc73559a/20231013-policies-hoiku-shishin-h30-2_19.pdf
- 文部科学省 幼稚園教育要領「第2章 ねらい及び内容」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/nerai.htm
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