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「危ない遊び」に、意味がありました ― 子どもの「ちょっと冒険」を、世界の研究と日本の指針から読み解く

「危ない遊び」に、意味がありました ― 子どもの"ちょっと冒険"を、世界の研究と日本の指針から読み解く

「危ない遊び」に、意味がありました ― 子どもの「ちょっと冒険」を、世界の研究と日本の指針から読み解く

ざっくりいうと

  • 木登り・全力疾走・道具を使う遊びなど、ヒヤッとする「危ない遊び」は、発達心理学で「リスキー・プレイ」と呼ばれ、子どもが自分から求める大切な遊び方のひとつです
  • ノルウェーの研究者サンセター氏らは、この遊びが「怖さに少しずつ触れて乗り越える練習」だと説明しています
  • カナダなど8か国・約5万人分のデータを調べた研究では、リスキー・プレイは体力や社会性にプラスの効果があり、けがのほとんどは軽いものだったと報告されています
  • 国土交通省の遊具の指針でも、子ども自身が判断できる「リスク」は遊びの価値として残し、予測できない「ハザード」だけを取り除く、という考え方が示されています
  • 大切なのは「危ない遊びをさせる」ことではなく、「本当に危ないもの」と「見守りながら任せていいもの」を分けて考えることです

「危ない!」と言いたくなる、その前に

仙台も朝晩はずいぶん涼しくなり、公園で体を動かすのが気持ちいい季節になりました。

木に登ろうとする、高い遊具のてっぺんから飛び降りようとする、棒を振り回して走り回る――そんな姿を見て、思わず「危ない!」「やめて!」と声が出てしまうこと、ありませんか。

もちろん、大きなケガにつながる場面では止める必要があります。でも実はここ十数年、世界の発達心理学の分野で、「子どもが自分から求める『ちょっと危ない遊び』には、ちゃんと意味がある」という研究が積み重ねられてきました。今日は、そのお話をご紹介します。


「リスキー・プレイ」って、なに?

この分野の研究をリードしてきたのが、ノルウェーの発達心理学者エレン・サンセター氏です。2011年、共同研究者のレイフ・ケナイア氏と発表した論文で、子どもが世界中で自然と求める「リスキー・プレイ(挑戦的な遊び)」を、次の6つに分類しました。

  • 高い場所に登る・飛び降りる・バランスをとる
  • すごいスピードで走る・こぐ・すべる
  • ハサミやノコギリなど、道具を使う
  • 火・水辺・崖など、危険な要素に近づく
  • 取っ組み合いや棒での遊び(乱暴に見える遊び)
  • 大人の目の届かないところへ、ひとりで探検に出る

読んでいただくと分かるとおり、決して特別な遊びではありません。木登り、鬼ごっこ、公園の高い遊具、お手伝いでの包丁使い――どのご家庭でも、一度は目にしたことのある場面ばかりではないでしょうか。


なぜ、子どもは「怖いこと」を求めるのか

サンセター氏らの理論で興味深いのは、その理由です。

人は誰でも、高い場所や見知らぬ場所への本能的な恐怖心を持っています。これは、幼いうちに大きな危険を避けるための、進化のなかで身についた仕組みだと考えられています。

サンセター氏らは、子どもが自分から挑戦する「ちょっと危ない遊び」を、この恐怖心と少しずつ、安全な形で向き合う練習の場だと説明しています。低いところから高いところへ、ゆっくりから少し速く――自分のペースで挑戦を重ねることで、「これくらいなら大丈夫」「これは危ない」を見分ける判断力そのものが育っていく、という考え方です。

つまり、危ない遊びを完全に遠ざけてしまうと、皮肉なことに、本当に危険な場面での「判断する力」が育つ機会も一緒に減ってしまうかもしれない、ということです。


8か国・約5万人のデータが示したこと

「そうは言っても、実際にケガが増えるのでは」と気になる方も多いと思います。ここで参考になるのが、2015年に学術誌に発表された、大規模なシステマティック・レビュー(複数の研究をまとめて評価する手法)です。

カナダのブルソーニ氏を中心とする研究チームが、カナダ・ノルウェー・アメリカなど8か国、3〜12歳の子どもたち合計およそ5万人分のデータをもとにした21本の論文を分析しました。結果は、次のようなものでした。

  • リスキー・プレイをよくする子どもほど、身体活動の量が多い傾向が見られた
  • 友だちとの関わりなど、社会性の面でもよい傾向が報告された
  • 乱暴な行動(攻撃性)はむしろ減る傾向が見られた
  • けがについては報告があったものの、その多くは軽いものだった

研究チームは、「リスキー・プレイを遠ざけるより、健やかな育ちのために後押しすることが望ましい」と結論づけています。もちろん、これは「何でも自由にさせてよい」という意味ではなく、見守りのある環境のなかで、という前提のお話です。


日本の遊具の指針も、実は同じ方向を向いています

これは海外だけの話ではありません。国土交通省が公園の遊具について定めている「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」(令和6年6月改訂第3版)にも、よく似た考え方が書かれています。

指針では、「リスク」と「ハザード」という2つの言葉が、はっきり区別されています。

リスクは、遊びの楽しみの要素で冒険や挑戦の対象となり、子どもの発達にとって必要な危険性は遊びの価値のひとつである。子どもは小さなリスクへの対応を学ぶことで経験的に危険を予測し、事故を回避できるようになる。

一方で「ハザード」は、こう説明されています。

ハザードは、遊びが持っている冒険や挑戦といった遊びの価値とは関係のないところで事故を発生させるおそれのある危険性である。また、子どもが予測できず、どのように対処すれば良いか判断不可能な危険性もハザードであり

そのうえで指針は、「遊びの価値を尊重して、リスクを適切に管理するとともにハザードの除去に努めることを基本とする」と結んでいます。

つまり、「子ども自身が見て、判断できる危なさ」は残し、「見えないところに潜む、避けようのない危なさ」だけを取り除く、という考え方です。海を渡った先の研究と、国内の公的な指針が、同じ結論にたどり着いているのは、とても興味深いことだと思います。


「リスク」と「ハザード」を、見分けるヒント

とはいえ、とっさに見分けるのは簡単ではありません。ひとつの目安として、こんな問いかけが役に立ちます。

「もし失敗しても、大きなケガにはつながらないか?」

木登りで、地面がやわらかい草地なら「リスク」。同じ木登りでも、真下にコンクリートや尖った石があるなら「ハザード」に近づきます。全力疾走も、広い公園の中でなら「リスク」。車の通る道のすぐそばでなら話は別です。

道具の扱いも同じです。見ている大人がそばにいて、使い方を伝えたうえでのハサミや包丁のお手伝いは「リスク」。目を離した隙に、というのは避けたい場面です。


今日からできる、4つの小さなこと

  • 「危ない!」と言う前に、ひと呼吸おいて、本当に止めるべき場面かを見きわめてみる
  • 高い場所や木登りでは、すぐに手を出さず、そばで見守る位置につく
  • ハサミや包丁など、道具を使うお手伝いを、少しずつ経験させてみる
  • 見守りの体制が整った公園や「プレーパーク」(冒険遊び場)を活用してみる

仙台市でも「あそびばせんだい」など、経験豊富な「プレーリーダー」が見守るなかで、木登りや水辺遊びに挑戦できる冒険遊び場の取り組みが、市内各地で行われています。ご家庭だけで判断に迷うときは、こうした見守りのある場を頼るのもひとつの方法です。


気がかりなことがあるときは

お子さんの発達や、行動の激しさ・慎重さについて気になることがあるときは、ひとりで抱えこまないでください。仙台市の各区保健福祉センターや、のびすくなどの子育て支援拠点、園の先生、かかりつけの小児科でも相談を受け付けています。

このコラムは研究や公的な指針の紹介であり、診断や治療にかわるものではありません。お子さんの安全に関わる判断に迷うときは、必ず現場の状況を優先し、専門家にもご相談ください。


Family Sitter が大切にしていること

わたしたち Family Sitter 仙台がお子さまをお預かりするとき、「危ないから、ぜんぶ止める」のではなく、「どこまでなら見守りながら任せられるか」を、その場でこそ判断するようにしています。

木登りに挑戦したいとき、水たまりに入ってみたいとき、少し速く走ってみたいとき。そばに大人の目があるからこそ、安心して挑戦できることが、きっとあります。

お子さまの「やってみたい」を、そばで見守る存在が必要なとき。ご家庭の判断に迷う場面でも、どうぞお気軽にお声がけください。


参考にした情報

  • Sandseter, E. B. H., & Kennair, L. E. O.「Children’s Risky Play from an Evolutionary Perspective: The Anti-Phobic Effects of Thrilling Experiences」Evolutionary Psychology, 2011年
  • Brussoni, M., Gibbons, R., Gray, C., Ishikawa, T., Sandseter, E. B. H., Bienenstock, A., Chabot, G., Fuselli, P., Herrington, S., Janssen, I., Pickett, W., Power, M., Stanger, N., Sampson, M., & Tremblay, M. S.「What is the Relationship between Risky Outdoor Play and Health in Children? A Systematic Review」International Journal of Environmental Research and Public Health, 12(6), 2015年, 6423–6454頁
  • 国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」(改訂第3版)令和6年6月
  • 仙台市「遊び場展開事業(あそびばせんだい)」/冒険あそび場せんだい・みやぎネットワーク

※このコラムは、公開されている研究と公的な指針をもとに、子育て中のパパママ向けにやさしく整理したものです。お子さまの安全に関する最終的な判断は、その場の状況を優先し、必要に応じて専門家にもご相談ください。

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