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5歳の”クラス”が、27歳に届いていた ― 約1万人を追跡した「プロジェクトSTAR」研究が教えてくれること

5歳の”クラス”が、27歳に届いていた ― 約1万人を追跡した「プロジェクトSTAR」研究が教えてくれること

「小さい頃の環境って、その後にどこまで影響するんだろう」「早くから勉強させたほうがいいのかな」。子育てをしていると、ふとそんな疑問が頭をよぎることはありませんか。

今日ご紹介するのは、その疑問に正面から挑んだ、少しめずらしい研究です。米国で約11,500人の子どもたちを”くじ引き”でクラスに割り当て、なんと27歳ごろの暮らしぶりまで追いかけた「プロジェクトSTAR」。ハーバード大学の経済学者ラジ・チェティ教授らのチームが2011年に発表した分析は、世界中の教育関係者を驚かせました。仙台のパパママにも知ってほしい、あたたかい結論をもつ研究です。

ざっくりいうと

幼稚園(5歳ごろ)の1年間を「どんな先生・どんなクラス」で過ごしたかは、テストの点数への影響こそ数年で見えなくなるものの、大人になってからの収入・大学進学・持ち家などに、はっきりと差になって現れていました。カギは、テストに映らない「最後までやりきる」「人と折り合う」といった心と行動の育ち。幼児期のあたたかい環境は、消えたように見えて、子どもの中に静かに残り続ける――そんなことを教えてくれる研究です。

「プロジェクトSTAR」って、どんな研究?

プロジェクトSTARは、1985年から1989年にかけて米国テネシー州の79の学校で行われた、教育分野では米国最大級といわれる実験です。約11,500人の子どもたちと先生が、幼稚園から小学3年生までのあいだ、”くじ引き”(無作為)でクラスに割り当てられました。

この「くじ引き」が、実はとても大切なポイントです。ふだんの学校では、クラス分けにはいろいろな事情が関わるため、「いいクラスにいた子が伸びたのは、もともと環境に恵まれていたからでは?」という疑問がついて回ります。ところがSTARでは偶然だけでクラスが決まったので、「クラスの違いそのもの」が子どもに与える影響を、正確に比べることができるのです。

そして約20年後。チェティ教授らのチームは、このSTARのデータを大人になってからの記録と突き合わせ、参加した子どもたちの25〜27歳ごろの収入や進学、暮らしぶりを分析しました。

発見①:テストの点の差は、いったん”消えた”

まず分かったのは、幼稚園で「質の高いクラス」(先生の力量やクラスの雰囲気などがよいクラス)に入った子どもたちは、その年のテストの点数がはっきり伸びた、ということでした。ここまでは、想像どおりかもしれません。

ところが、その差は長続きしませんでした。小学4年生から中学2年生ごろの学力テストでは、どのクラスにいたかによる点数の差は、ほとんど見えなくなってしまったのです。こうした「効果のフェードアウト(薄れ)」は他の研究でもよく見られる現象で、当時は「幼児期の教育効果は一時的なもの」と考えられがちでした。

発見②:大人になって、効果が”再登場”した

本当の驚きは、ここからでした。テストの点数からは消えたはずの「いいクラスの効果」が、大人になってから再登場したのです。

質の高いクラスで幼稚園時代を過ごした子どもたちは、27歳ごろの時点で、収入が高い傾向にあり、大学に進学した割合も高く、持ち家や老後への備えといった面でも良い傾向を示していました。研究チームの試算では、幼稚園のテストの点数が1パーセンタイル(100人中の順位がひとつ分)高いことは、27歳ごろの年収約130ドルの差に対応していたといいます。

また、経験年数の豊かな先生に受け持たれた子どもは、大人になってからの収入も高い傾向がありました。平均より下(25パーセンタイル)の先生から平均より上(75パーセンタイル)の先生に変わると、子ども1人あたりの年収が約3.5%上がる計算になり、生涯でみると1人あたり1万ドル以上、クラス20人分では約32万ドル(数千万円)もの価値になる――研究チームはこの結果を「32万ドルの幼稚園の先生」と呼びました。

なぜ消えて、なぜ戻ってきたの? ― カギは”心と行動の育ち”

点数からは消えたのに、大人になって戻ってくる。この不思議なパターンを、研究チームは「非認知的な力の育ち」で説明しています。

いいクラスで1年を過ごした子どもたちは、授業に集中する、課題を最後までやりきる、お友だちと折り合いをつける、といった”心と行動の力”が育っていました。実際、小学4年生や中学2年生の時点で先生が子どもたちの様子(落ち着き・努力・まわりとの関わりなど)を評価したデータを見ると、幼稚園でいいクラスにいた子どもたちは、学力テストでは差がないのに、こうした行動面では良い評価を受け続けていたのです。そして、この行動面の育ちこそが、大人になってからの収入や暮らしと強く結びついていました。

考えてみれば、納得のいく話かもしれません。クラスをあたたかくまとめる力のある先生のもとで過ごした1年は、文字や数の知識だけでなく、「みんなの中で気持ちよく過ごすコツ」や「もう少しだけがんばってみる姿勢」を子どもに手渡します。それはテスト用紙には映らないけれど、働き、人と関わり、暮らしを築いていく大人の毎日を、ずっと支えてくれる力なのです。

仙台のパパママへ ― この研究をどう受け取る?

この研究から受け取りたいのは、「いい幼稚園に入れなければ」という焦りではありません。研究チーム自身、クラスの質の違いの多くは、設備や先生の学歴のような目に見える条件では説明できず、先生の関わり方やクラスの”空気”のようなものが大きいと述べています。つまり大切なのは、早期の詰め込みではなく、安心して過ごせる環境と、あたたかく関わってくれる大人の存在だということです。

そしてそれは、おうちでも育める「空気」です。たとえば、結果よりも「最後までやりきったね」と過程をことばにして届けること。お手伝いのような小さな役割を任せて、「自分でできた」という手ごたえをつくること。気持ちがぶつかった日には、「くやしかったね」と気持ちに名前をつけて一緒に整えること。幼稚園の”いいクラス”で起きていたことの本質は、こうした毎日の小さな関わりと、地続きにあります。

仙台・宮城には、幼稚園や保育園のほかにも、子どもがあたたかい大人と過ごせる場がたくさんあります。祖父母、地域の子育てサロン、そしてベビーシッターも、そのひとつ。子どもにとって信頼できる大人が”複数いる”ことは、安心できる居場所が増えるということでもあります。

気になることがあれば、専門家に相談を

本コラムは、海外の研究を一般向けにやさしくまとめたものであり、お子さま一人ひとりの育ちを予測するものではありません。子どもの発達には大きな個人差とペースがあります。発達や行動について気がかりが続くとき、集団生活での様子が心配なときは、かかりつけの小児科や仙台市の子育て相談窓口、園の先生など、専門家に早めにご相談ください。相談することは大げさなことではなく、ご家族の安心への近道です。

Family Sitter の想い

この研究が私たちに教えてくれるのは、「子どもは、どんな大人と、どんな空気の中で過ごすか」が、静かに、けれど長く残るということです。

Family Sitter 仙台のベビーシッターは、1対1だからこそ、お子さまのペースに合わせて「最後までできた」「気持ちを分かってもらえた」という時間をていねいに積み重ねることができます。パパママが少し休むあいだも、お子さまの毎日に”もう一人の信頼できる大人”がいる安心を。ベビーシッター・家事代行・イベント託児など、暮らしに合わせてお声がけください。


参考にした情報

  • Chetty, R., Friedman, J. N., Hilger, N., Saez, E., Schanzenbach, D. W., & Yagan, D. (2011) “How Does Your Kindergarten Classroom Affect Your Earnings? Evidence from Project STAR”, The Quarterly Journal of Economics, 126(4) / NBER Working Paper 16381
  • Opportunity Insights(ハーバード大学)研究要約「$320,000 Kindergarten Teachers」

※本コラムは一般的な研究情報をやさしくまとめたものです。お子さまの発達や育ちについて気がかりがある場合は、かかりつけの小児科や地域の子育て相談窓口など、専門家にご相談ください。

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