動画に頼る日があっても、大丈夫 ― スマホ・動画と幼児の発達を、最新調査と研究からやさしく読み解く
動画に頼る日があっても、大丈夫 ― スマホ・動画と幼児の発達を、最新調査と研究からやさしく読み解く
仙台のみなさん、こんにちは。Family Sitter 仙台です。
「静かにしてほしくて、つい動画を見せてしまった」「気づけば1時間たっていて、罪悪感でいっぱいに…」。スマホや動画との付き合い方は、いまの子育てで避けて通れない悩みのひとつではないでしょうか。夏休みが始まり、おうち時間が長くなるこの時期は、なおさらです。
毎週土曜の研究コラム、今回のテーマは「デジタルデバイス(スマホ・動画)と幼児の発達」。「見せちゃダメ」と自分を責めるためではなく、国の最新調査と研究データをもとに、わが家なりの”ちょうどいい距離”を見つけるためのお話です。
ざっくりいうと
国の最新調査では、2歳の子どもの6割以上がすでにインターネットを利用していて、0〜9歳の平日の平均利用時間は約2時間18分。動画やスマホは、もう「特別なもの」ではなく、子育ての日常の一部になっています。
一方で、WHO(世界保健機関)や日本の小児科の先生たちは「幼児の画面時間はほどほどに」という目安を示しています。ただ、近年の研究が教えてくれるのは、大切なのは時間の長さだけではなく、「何を見るか」と「どう関わるか」、そして外遊びや睡眠などの大切な時間を”置き換えすぎない”ことだ、ということです。
いま、幼児のスマホ・動画事情は? ― 国の最新調査から
こども家庭庁が2026年2月に公表した「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」の速報によると、0〜9歳の子どもの75.2%がインターネットを利用しています。年齢別に見ると、2歳ですでに63.5%、5歳では約8割。「うちの子だけ早すぎる…?」と心配していた方も、実は多くのご家庭で同じ状況だとわかります。
平日1日あたりの平均利用時間は約2時間18分で、前の年よりも約9分増えました。そして使いみちのだんとつ1位は「動画視聴」で93.4%。幼児期のインターネットは、ほぼ「動画を見ること」と言ってよさそうです。
もうひとつ心強いデータもあります。低年齢の子どもがスマホを使う家庭では、保護者の96.8%が何らかの形で使い方を見守っていて、「目の前(画面が見える距離)で使わせている」が58.6%、「時間や場所を決めている」が57.0%。多くのパパママが、悩みながらも工夫しているのです。
「何時間まで?」 ― 世界と日本の目安
では、どのくらいが「ほどほど」なのでしょうか。
WHOは2019年に、5歳未満の子どもの身体活動・座位行動・睡眠についてのガイドラインを発表しました。そこでは、2〜4歳の子どもが座ったまま画面を見る時間は「1日1時間まで、少なければ少ないほど良い」、1歳未満については「推奨されない」とされています。
日本では、日本小児科医会が「スマホに子守りをさせないで」という啓発活動で知られています。「2歳まではテレビ・動画の視聴を控えめに」「すべてのメディアに触れる合計時間は1日2時間までが目安」といった提言で、宮城県内の自治体の子育て情報でも紹介されています。
ここで大切なのは、これらはあくまで”目安”だということ。「今日は1時間半見せてしまった…」と落ち込む必要はありません。目安を知っておくことは、罪悪感を増やすためではなく、「わが家はどのへんを目指そうか」と考える出発点にするためのものです。
赤ちゃんは”画面”より”人”から学ぶ ― 対面のやりとりの力
「知育動画なら、たくさん見せた方が良いのでは?」と思う方もいるかもしれません。ここで、発達研究のとても有名な実験をご紹介します。
米ワシントン大学のパトリシア・クール博士らは、生後9か月のアメリカの赤ちゃんに、中国語(外国語)を聞かせる実験をしました(2003年に米国科学アカデミー紀要で発表)。人と対面で、遊びながら中国語で語りかけてもらったグループの赤ちゃんは、中国語の音の聞き分けを学ぶことができました。ところが、まったく同じ内容を「映像」や「音声だけ」で聞いたグループは、ほとんど学べなかったのです。
この結果が教えてくれるのは、小さな子どもの学びのカギは「人との生きたやりとり」にある、ということ。画面の中からの一方通行の情報は、赤ちゃんにとっては、対面のやりとりの代わりにはなりにくいのです。
だからこそ逆に、おじいちゃん・おばあちゃんとのビデオ通話のように”やりとり”のある画面時間は、一方的に動画を見るのとは意味合いが違う、と考えられています。
「量」だけでなく、「内容」と「関わり方」
近年の子どもとメディアの研究で共通して言われるのは、「画面時間の影響は、時間の長さだけでは決まらない」ということです。
同じ30分でも、ひとりで次々と動画を見続けるのと、パパやママと一緒に見ながら「わんわんいたね」「これ、なんだろうね?」と会話するのとでは、子どもの経験としてまったく別のものになります。大人が隣で言葉をそえることで、動画の内容が親子のおしゃべりの材料になり、ことばの育ちにつながることもあります。
年齢に合った内容を選ぶことも大切です。テンポが速すぎるもの、刺激の強いものより、ゆったりした子ども向けの番組や動画を。「なにを・どこで・だれと見るか」を意識するだけで、画面との付き合い方はぐっと変わります。
いちばんのポイントは”置き換えすぎない”こと
研究者たちが画面時間について心配しているのは、実は「動画そのものが毒だから」ではありません。いちばんの心配は、動画の時間が長くなることで、幼児期の育ちに欠かせない時間が”置き換わって”しまうことです。
体を思いきり動かす外遊びの時間。親子の何気ないおしゃべりの時間。絵本やごっこ遊びの時間。そして、ぐっすり眠る時間。こうした時間がきちんと守られているなら、雨の日に動画の力を借りることに、神経質になりすぎなくて大丈夫です。
逆に言えば、「今日は動画が長かったな」と感じた日は、寝る前に絵本を1冊読む、明日は公園に行く、といった形でバランスを取り戻せばいい。1日単位の完璧さより、1週間くらいの目で見たバランスがおすすめです。
夏休みの今日からできる、4つの小さな工夫
最後に、今日から試せる工夫を4つだけ。全部やらなくて大丈夫。できそうなものを1つ選んでみてください。
- 時間と場所を、ゆるく決める(例:食事中は見ない、リビングで見る)
- できるだけ一緒に見て、一言そえる(「これ、なんだろうね?」)
- 眠る1時間前は画面オフに(光の刺激は寝つきに影響しやすいため)
- 終わりは「あと1本ね」と予告してから(急に消すより、切り替えやすくなります)
国の調査でも、低年齢の子どものいる家庭の約8割がインターネットのルールを決めていました。「わが家のゆるいルール」を1つ作ることが、罪悪感を手放す近道になるかもしれません。
気になるときは、専門家に相談を
ことばの育ちや、視力、生活リズムなど、お子さんの発達で気になることがあるときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけの小児科医や、仙台市の乳幼児健診・子育て相談窓口など、専門家に相談してくださいね。このコラムは研究の紹介であって、お子さん一人ひとりの診断やアドバイスの代わりにはなりません。
Family Sitter の想い
動画に頼りたくなる日は、パパママの心と体が「休みたい」とサインを出している日でもあります。そんな日は、動画ではなく”人”に頼っていい日かもしれません。
Family Sitter のシッターがお子さんと過ごす時間は、手遊び、絵本、ごっこ遊び、お散歩など、人とのやりとりをたっぷり含んだ”画面オフ”の時間です。お子さんにとっては生きたやりとりの時間に、パパママにとっては心を休める時間に。仙台・宮城で子育てをするご家族の「もう一人の信頼できる大人」として、お手伝いできたら嬉しいです。どうぞお気軽にご相談ください。
参考にした情報
- こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」(2026年2月)
- WHO「Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age」(2019年)
- 日本小児科医会「スマホに子守りをさせないで」リーフレット・子どもとメディアに関する提言
- Kuhl, P. K., Tsao, F.-M., & Liu, H.-M.(2003)「Foreign-language experience in infancy」米国科学アカデミー紀要(PNAS)
- 宮城県七ヶ浜町 子育てポータルサイト「スマホに子守をさせないで」
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