「ただいま」で、また安心できる ― “安心の基地”を育てるアタッチメントのはなし
「ただいま」で、また安心できる ― “安心の基地”を育てるアタッチメントのはなし
ざっくりいうと
子どもが不安なときに大人にくっつき、安心するとまた遊びに戻っていく。この当たり前の毎日のくり返しが、発達心理でいう「アタッチメント(愛着)」です。たっぷり甘えて安心できる子ほど、その安心を足場にして、外の世界へと一歩を踏み出していけます。「甘えさせると自立できない」ではなく、「安心があるから自立できる」。今日は、そのしくみと、忙しい毎日の中でできる関わりを、仙台のパパママへやさしくお伝えします。
アタッチメントって、なに?
アタッチメント(愛着)とは、イギリスの精神科医ボウルビィが提唱した考え方で、「人が生まれて間もない時期に、特定の人との間に結ぶ情愛的な絆」を指します。お腹がすいた、こわい、さびしい ― そんなふうに気持ちがゆらいだとき、子どもは決まった大人に近づき、くっつくことで安心を取り戻します。この一連の流れ全体が、アタッチメントです。
ここで大切なのが、養育者には二つの役割があるということ。ひとつは、こわいことがあったときに逃げ込める「安全な避難所」。もうひとつは、安心したあとに、そこを拠点として外の世界を探検しにいくための「安心の基地(secure base)」です。公園で遊んでいた子が、ときどき振り返ってママの姿を確認し、また遊びに戻っていく ― あの行ったり来たりこそ、安心の基地がきちんと機能している証拠なのです。
「甘え」と「自立」は、手をつないでいる
「抱き癖がつくのでは」「甘やかすと自立できないのでは」。そんな声を耳にすることがあります。けれども研究が示してきたのは、その逆に近いことです。安心できる基地があるからこそ、子どもは安心して離れていける。十分に甘えて「いざとなれば戻れる」と感じている子は、好奇心のおもむくままに探索し、新しいことに挑戦できます。甘えることと、自分でやってみること。この二つは対立するものではなく、同じ安心からのびる二本の枝なのです。
“安定した愛着”って、どんな状態?
愛着のかたちを観察する有名な方法に、心理学者エインズワースが考案した「ストレンジ・シチュエーション法」があります。見知らぬ部屋で養育者と短く離れ、再会する場面での子どもの反応を見るものです。そこで「安定型」とされる子は、離れたときには寂しくて泣いたり混乱したりしても、養育者が戻ってくるとすぐに落ち着き、笑顔で迎え入れ、また遊びに戻っていきます。
ここで知っておきたいのは、「泣くこと」そのものは、悪いことでも失敗でもないということ。むしろ大事なのは、戻ってきた人に安心して気持ちを立て直せるかどうかです。預けるときに泣くわが子を見ると胸が痛みますが、「ただいま」のあとにケロッと遊びはじめるなら、それは信頼がしっかり育っているサインと考えられます。
安心を育てる、4つの関わり
では、安定した愛着はどんな関わりから育つのでしょうか。研究では、安定した愛着を持つ子どもの養育者に、おおよそ次の四つの共通点があると報告されています。
ひとつ、子どもが出すサインに敏感であること。泣き方や表情から「眠いのかな」「不安なのかな」とくみ取ろうとする姿勢です。ふたつ、子どもが今していることに協力的であること。先回りして奪うのではなく、やりたい気持ちにそっと付き合う関わりです。みっつ、心理的にも物理的にも「利用可能」であること。いつでも頼れる、そばにいてくれるという感覚です。よっつ、子どもの要求に受容的であること。気持ちをいったん受けとめてもらえる安心感です。
四つとも、特別な教材も英才教育もいりません。「気づく・付き合う・そばにいる・受けとめる」。日々のふれあいの積み重ねが、そのまま安心の土台になっていきます。
心の中に育つ“安心の地図”
くり返し安心を経験するうちに、子どもの心の中には「人は助けてくれる」「自分は大切にされる存在だ」というイメージがしっかりと根づいていきます。これを発達心理では「内的作業モデル」と呼びます。いわば、人間関係や自分自身についての“心の地図”のようなもの。この地図が安心で満たされていると、それは自己肯定感や、他者への基本的な信頼感の土台になっていくと考えられています。こども家庭庁の調査研究などでも、乳幼児期のアタッチメント形成は「学びに向かう力」の基盤として位置づけられています。
愛着の相手は、ママひとりじゃなくていい
「愛着=お母さん」というイメージを持つ方は少なくありません。でも実際には、子どもは信頼できる複数の大人と愛着を結ぶことができます。父親、祖父母、保育者、そしてシッター ― さまざまな大人が子育てを分け合うことを「アロマザリング」と呼びます。母親ひとりが抱え込む負担をやわらげるとともに、子どもにとっては「安心の置き場所」が複数になる、というプラスの側面があると考えられています。
ですから、「人に預けると愛着が壊れてしまう」と心配しすぎる必要はありません。むしろ、信頼できる大人がそばに増えることは、子どもの世界を広げ、安心を増やすことにもつながります。ただし一点だけ。安定した愛着には「続けて関わる、安定した関係」であることが大切とも指摘されています。預け先がころころ変わるよりも、顔なじみの人がくり返し関わってくれる環境のほうが、子どもは安心しやすいのです。
今日からできる、小さな関わり
完璧を目指さなくて大丈夫です。泣いたときに「そばにいるよ」と声をかける。離れて戻ってきたら、まずぎゅっと抱きしめる。甘えてきたら、いったん受けとめる。そして、ママ・パパ自身が疲れたときは、まわりに頼る。「離れる練習」も「戻ってこられる安心」も、どちらも愛着を育てる大切な時間です。肩の力を抜いて、できる日にできるぶんだけ。それで十分に伝わっています。
気がかりが続くときは
後追いや分離のときの不安がとても強い、なかなか落ち着けない、関わり方に悩みが深い ― そんな状態が続いて気になるときは、ひとりで抱え込まないでください。かかりつけの小児科や、お住まいの地域の子育て相談窓口など、専門家に相談することも、立派な「頼る力」です。仙台市内にも、子育て世帯が気軽に相談できる窓口があります。
Family Sitter からのおすそ分け
Family Sitter 仙台は、お子さまにとっての「もう一つの安心の基地」でありたいと考えています。できるだけ同じシッターが継続して関わり、お子さまの気持ちのサインにていねいに向き合い、「おかえり」と笑顔で迎えられる存在へ。預けることは、安心を手放すことではなく、安心を増やすこと。パパママの心にも、少しのゆとりが生まれますように。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
参考にした情報
- 愛着理論(ジョン・ボウルビィ/メアリー・エインズワース)― 安全な避難所・安心の基地・内的作業モデルの考え方
- エインズワース「ストレンジ・シチュエーション法」と愛着のタイプ(安定型/回避型/アンビバレント型)
- 安定した愛着を育てる養育者の4つの特徴(HugKum〔小学館〕、相愛大学 研究紀要「アタッチメント理論から考える保育所保育のあり方」ほか)
- アロマザリング=親以外の大人による養育(早稲田大学ウェブマガジン、imidas〔集英社〕ほか)
- こども家庭庁 委託調査研究、ベネッセ教育情報サイト(アタッチメントと育ちの土台)
※本コラムは一般的な情報提供を目的としたものです。お子さまの発達や心の状態について心配なことがある場合は、小児科医や心理・子育ての専門機関にご相談ください。
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