「また、お店屋さんごっこ?」は、学びの真っ最中 ― ごっこ遊びのちからを、教育の指針と発達心理学から読み解く
「また、お店屋さんごっこ?」は、学びの真っ最中 ― ごっこ遊びのちからを、教育の指針と発達心理学から読み解く
「いらっしゃいませ〜!」と、今日も開店したおうちのお店屋さん。「また同じ遊び?」「遊んでばかりで、そろそろ勉強っぽいことをさせたほうがいいのかな」――そんなふうに、ふと不安になったことはありませんか。
結論から言うと、幼児期の「ごっこ遊び」は、専門家のあいだで”最高クラスの学び”と考えられている活動のひとつです。今日は、国の教育の指針と発達心理学の考え方をたよりに、ごっこ遊びの中で子どもに何が育っているのかを、やさしく読み解いていきます。
ざっくりいうと
- 文部科学省の「幼稚園教育要領」では、遊びは「重要な学習」と位置づけられ、幼児教育は「遊びを通しての総合的な指導」が中心とされています
- ごっこ遊びでは、ことば・相手に合わせる力・自分を抑える力が、まとめて育つと考えられています
- 心理学者ヴィゴツキーは、ごっこ遊びを”発達を引っぱる活動”ととらえました
- 大人の役割は「教える」ことより、子どもの世界に「乗っかる」こと。5分の参加でも遊びは深まります
遊びは「重要な学習」――国の指針が、はっきり書いていること
「遊び」と「学び」は、反対のもののように感じられるかもしれません。けれど、日本の幼児教育の土台である文部科学省の「幼稚園教育要領」には、遊びについてこう書かれています。幼児の自発的な活動としての遊びは、心身の調和のとれた発達の基礎を培う「重要な学習」である――。そのため幼稚園などでの教育は、何かを教え込む授業ではなく、「遊びを通しての指導」を中心に行うこととされています。
さらに、幼児期に遊びを通して育てたい力として、「知識及び技能の基礎」「思考力・判断力・表現力などの基礎」「学びに向かう力・人間性など」という3つの柱が示されています。小学校以降の学習や生活の土台になる力が、机の上ではなく遊びの中で育つ、というのが国の考え方なのです。
つまり、「遊んでばかり」は心配なことではなく、幼児期にはむしろ望ましい姿だと言えます。
ごっこ遊びは”ことばの教室”
数ある遊びの中でも、ごっこ遊びには特有の良さがあります。ひとつめは、ことばの発達です。
お店屋さんごっこを思い浮かべてみてください。「いらっしゃいませ」「これください」「300円です」「おすすめはどれですか?」――ふだんの生活ではあまり使わない言い回しが、役になりきることで自然と口から出てきます。病院ごっこなら「どうしましたか?」「お薬を出しますね」。ヒーローごっこなら、仲間との作戦会議も始まります。
発達心理学では、子どもは大人や友だちとのやりとりを通してことばの意味を身につけていき、やがてそのことばが「考えるための道具」になっていくと考えられています。ごっこ遊びは、そのやりとりが次々と生まれる場。新しい語彙にふれ、相手に合わせて話し方を変え、自分の考えを説明したり交渉したりする――まさに”ことばの教室”のような時間なのです。
「役になりきる」ことが、自分をコントロールする練習に
ふたつめは、少し意外かもしれません。ごっこ遊びは、「がまんする力」「気持ちを切りかえる力」の練習にもなると考えられています。
ロシアの心理学者ヴィゴツキーは、遊び、とりわけごっこ遊びを、子どもの”発達を引っぱる活動”として重視しました。ポイントは、ごっこ遊びには「役のルール」があることです。お医者さん役の子は、本当は走り回りたくても「お医者さんらしく」やさしく話そうとします。お客さん役の子は、順番が来るまで待ちます。誰に言われたわけでもないのに、子どもは自分から役のルールに従うのです。
この「役になりきるために、いつもの自分をちょっと抑える」という経験が、自分をコントロールする力の芽を育てる、と考えられています。イヤイヤ期を過ぎたころの子どもが、遊びの中でなら驚くほど「待てる」「ゆずれる」ことがあるのは、この仕組みのおかげかもしれません。
なぜ”遊び”だと、こんなに育つの?
ごっこ遊びに限らず、遊びの学びが強い理由は、「自分からやりたくて始めている」ことにあります。
心が動くから、夢中になれる。夢中だから、何度もくり返す。くり返す中で、「お店の看板を作ろう」「お金も作ろう」と工夫が生まれる。そのすべてが、”やらされた練習”ではなく”自分の経験”として積み重なっていきます。こども家庭庁の「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン」に関する調査研究でも、子どもが安心できる環境で主体的に遊び込む経験の大切さが、科学的知見とともに整理されています。
「遊び」対「学び」ではなく、「遊びこそが幼児期の学びのかたち」。これが、いま多くの専門家が共有している考え方です。
大人の役割は「教える」より「乗っかる」
では、パパママは何をすればいいのでしょうか。うれしいことに、答えは「上手に教えること」ではありません。
- 子どもの世界に、お客さん役や患者さん役として参加してみる
- 「それください」「おすすめはありますか?」と、ひとこと話をふくらませる
- 「本当はこうでしょ」と、遊びを途中で正しすぎない
- 安心して没頭できる時間と空間を守る
主役はあくまで子ども。大人は”共演者”として乗っかるだけで、会話の往復が増え、遊びはぐっと深くなります。5分だけの参加でも十分です。
暑い夏こそ、おうちが”学びの舞台”に
連日の猛暑で、外遊びの時間をとりにくいこの季節。仙台でも、暑さ指数が高い日は無理をしないことが大切です。そんな日こそ、ごっこ遊びの出番です。
道具は、おうちにあるもので十分。空き箱と広告があればお店屋さんが開店しますし、ぬいぐるみを寝かせれば病院ごっこが始まります。タオル1枚がマントになり、ソファが秘密基地になる。特別なおもちゃや教材がなくても、子どもの想像力が舞台装置を用意してくれます。
Family Sitter の想い
Family Sitter のシッターは、お子さまの安全を守る存在であると同時に、”遊びの相棒”でもありたいと考えています。1対1だからこそ、その子の「やりたい」に、とことん付き合える。お店屋さんの常連客にも、病院の患者さんにも、何度でもなれます。
お子さまが遊びこむ時間は、パパママがひと息つく時間にもなります。「夏休み、家の中で持て余してしまって…」というときも、どうぞお気軽にお声がけください。
なお、ことばの育ちや発達について気になることが続く場合は、かかりつけの小児科医や、仙台市の子育て相談窓口・のびすくなど、専門家への相談もあわせてご検討ください。
参考にした情報
- 文部科学省「幼児教育の重要性・遊びを通した学び」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youchien/mext_02697.html
- 文部科学省「幼稚園教育要領(平成29年告示)」 https://www.mext.go.jp/content/1384661_3_2.pdf
- こども家庭庁「『幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン』策定後の具体的な取組推進 科学的知見の充実・普及に向けた調査研究」 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/55e89c07-ffc5-40a9-bad7-ce6c6dd11b8a/90178a35/20250421_policies_kodomo_sodachi_research_05.pdf
※本記事は一般的な情報の紹介であり、個別の発達に関する診断・助言ではありません。気になることがあれば、専門家にご相談ください。
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