「がんばる力」「我慢する力」は、どう育つ? ― いま注目の”非認知能力”を、研究からやさしく
「がんばる力」「我慢する力」は、どう育つ? ― いま注目の”非認知能力”を、研究からやさしく
「うちの子、すぐに諦めちゃうな」「順番をちゃんと待てるか心配」「勉強だけできればいいのかな…」。子育てをしていると、テストの点数や読み書きとは別のところで、ふと不安になる瞬間がありますよね。
実はいま、まさにその”点数では測れない力”が、教育や発達の研究で大きく注目されています。それが「非認知能力」と呼ばれるものです。今日は、この少しむずかしそうな言葉を、仙台のパパママに向けてやさしくほどいていきます。
ざっくりいうと
非認知能力とは、粘り強さ・自己コントロール・好奇心・人と関わる力など、「テストの点数では測りにくいけれど、これからを生きていく土台になる力」のことです。研究では、こうした力が幼児期からの関わりの中で育ち、その後の学びや暮らしに長く影響することがわかってきました。そして大切なのは、特別な早期教育で”教え込む”ものではなく、安心できる毎日の関わりの中で”育っていく”力だということ。今日からおうちでできることも、たくさんあります。
非認知能力って、なに?
学力テストやIQのように数値で測りやすい力を「認知能力」と呼ぶのに対し、数字にしづらい心や行動の力を「非認知能力」と呼びます。たとえば、目標に向かってコツコツ続ける粘り強さ、やりたい気持ちをちょっと抑える自己コントロール、「なんでだろう?」と知りたくなる好奇心、お友だちと折り合いをつける力などです。
OECD(経済協力開発機構)は、この非認知能力を「社会情緒的スキル」という言葉で具体的に整理しています。大きく分けると、(1)目標の達成に関わる力(忍耐力・自己抑制・目標への情熱)、(2)他者との協働に関わる力(社交性・敬意・思いやり)、(3)感情の制御に関わる力(自尊心・楽観性・自信)の3つの側面です。どれも、毎日の暮らしの中で少しずつ育っていく、生きる力の土台といえます。
日本でも、文部科学省は認知能力と非認知能力を「どちらも大切な力」と位置づけています。2017〜2019年に改訂された学習指導要領では、「学びに向かう力、人間性」といった非認知能力的な側面が、知識・技能と並んで重視されるようになりました。東京大学の発達保育実践政策学センター(CEDEP)や国立教育政策研究所でも、幼児期の非認知能力と環境の関わりについての研究が進められています。
研究でわかってきた、長く続く影響
非認知能力がこれほど注目されるきっかけのひとつが、アメリカの「ペリー就学前プロジェクト」という有名な研究です。1960年代、経済的に余裕のない家庭の3〜4歳の子どもたちに質の高い幼児教育を行い、その後40年以上にわたって追跡しました。すると、参加した子どもたちは、学歴・就労・収入・健康などの面で良い傾向が見られたと報告されています。
この研究を分析したのが、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマン教授です。教授は「長期的な効果のカギは、IQそのものよりも、非認知能力の向上にあった」と述べています。幼児期に育まれた”やり抜く力”や”人と関わる力”が、その後の人生をゆるやかに支えていく――そんな見方が、ここから広がっていきました。
「マシュマロテスト」には、続きがあります
自己コントロールの研究として、よく知られているのが「マシュマロテスト」です。4歳前後の子どもの前にマシュマロを1つ置き、「少し我慢できたら、あとで2つあげるね」と伝えて、どれくらい待てるかを観察したものです。スタンフォード大学のミシェル博士らが行い、「我慢できた子は、その後の成長で良い傾向が見られた」と報告されました。
ただ、ここで知っておきたいのが”続き”の部分です。近年、より多くの子どもを対象にした再検証が行われ、「我慢できるかどうかには、その子の意志の強さだけでなく、家庭の経済状況や環境が大きく関わっている」と指摘されるようになりました。つまり、「我慢できた=将来必ず成功する」と単純に結びつけるのは早すぎる、ということです。
これは、パパママにとってはむしろ安心できる話かもしれません。「うちの子は我慢が苦手だから将来が心配…」と思いつめる必要はないのです。大切なのは、子どもが安心して育つ環境そのものなのですから。
「教え込む」より、「育つ環境」を
では、非認知能力はどうしたら育つのでしょうか。研究や教育の現場が共通して大切にしているのは、ドリルのように”教え込む”ことではなく、子どもが安心して挑戦できる”環境”をつくることです。
その土台になるのが、子どもの「自己肯定感」だといわれます。ベネッセの教育情報などでも、自己肯定感を土台に、自分に向かう力と他者に向かう力が育っていく、と説明されています。「あなたはあなたのままで大丈夫」と無条件に受けとめてもらえる安心感があるからこそ、子どもは「やってみよう」と外の世界に踏み出せます。失敗しても戻ってこられる場所があることが、粘り強さや好奇心を支えるのです。
今日からできる、小さな関わり
特別な道具も、難しいメソッドもいりません。たとえば、こんな関わりが非認知能力をやさしく育てます。
ひとつめは、少しだけ「待つ」こと。靴を自分で履こうとしている時、つい手を出したくなりますが、ぐっとこらえて見守ると、子どもは「自分でできた!」という達成感を味わえます。この小さな成功体験の積み重ねが、自信や粘り強さの芽になります。ふたつめは、「やってみたい」に付き合うこと。好奇心は、止められずに満たされることで育ちます。公園で立ち止まってアリの行列をじっと見ている時間も、子どもにとっては立派な学びの時間です。みっつめは、結果よりも過程を言葉にすること。「上手にできたね」だけでなく「最後までがんばったね」と伝えると、うまくいかない時も挑戦を続ける力になります。よっつめは、気持ちに名前をつけてあげること。「くやしかったね」「うれしいね」と言葉にしてもらううちに、子どもは自分の感情に気づき、少しずつ整える力を育てていきます。
そして、何より大切なのは、パパママ自身が無理をしすぎないこと。疲れた時には誰かに頼ることも、立派な選択です。子どもにとって、信頼できる大人が”複数いる”ことは、安心できる居場所が増えるということ。祖父母や保育者、シッターなど、頼れる手が増えることは、子どもの育ちにとってもプラスになります。
気がかりが続くときは
子どもの育ちには、一人ひとり大きな個性とペースがあります。ここでお伝えした内容は、あくまで一般的な研究や情報をやさしく整理したものです。発達や行動について気がかりが続くときや、不安が大きいときは、抱え込まずに、かかりつけの小児科や地域の子育て相談窓口など、専門家にご相談ください。早めに相談することは、決して大げさなことではなく、子どもにとってもご家族にとっても安心への近道です。
Family Sitter からのおすそ分け
非認知能力という言葉は新しくても、その中身は「あたたかく、ていねいに関わる」という、昔から大切にされてきたことそのものです。私たち Family Sitter 仙台は、お子さま一人ひとりに寄り添い、「やってみたい」を見守る”もう一人の信頼できる大人”でありたいと思っています。
そしてそれは、パパママの心にゆとりを届けることでもあります。ベビーシッター・家事代行・イベント託児など、暮らしに合わせた頼り方ができますので、「こんな時に頼れる?」と気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。子どもの”見えない力”を、仙台で一緒に育てていけたら嬉しいです。
参考にした情報
- OECD「社会情緒的スキル(非認知能力)」の3つの側面(目標の達成/他者との協働/感情の制御)
- 東京大学 発達保育実践政策学センター(CEDEP)/文部科学省委託「非認知能力に関する保育・幼児教育施設の意識や取り組みと園児への影響に関する調査研究」
- 文部科学省(学習指導要領における非認知能力の位置づけ)/国立教育政策研究所「社会情緒的(非認知)能力の発達と環境に関する研究」
- ペリー就学前プロジェクト、およびジェームズ・J・ヘックマン教授(ノーベル経済学賞)の分析
- マシュマロテスト(W・ミシェル)と、近年の再検証に関する解説
- ベネッセ教育情報(非認知能力の育み方・自己肯定感が土台になるという考え方)
※本コラムは一般的な情報をやさしくまとめたものです。お子さまの発達や育ちについて気がかりがある場合は、かかりつけの小児科や地域の子育て相談窓口など、専門家にご相談ください。
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