「なんで?」が止まらない日の、心の中 ― 3歳ごろの”なぜなぜ”を、研究からのぞいてみました
「なんで?」が止まらない日の、心の中 ― 3歳ごろの”なぜなぜ”を、研究からのぞいてみました
ざっくりいうと
- 3歳ごろの子どもは、1時間に平均76個ほどの質問をするという観察研究があります(家庭での会話を調べた小規模な研究です)。
- アメリカの研究では、2〜5歳の子が「なんで?」と聞いたあと、説明つきの答えをもらうと満足そうに次の質問へ進み、説明のない答えだと同じ質問をくり返したり、自分なりの答えを出したりしました。
- つまり”なぜなぜ”は、おしゃべりを続けたいだけではなく、本当に知りたいという気持ちの表れかもしれません。ただし、小さな研究が中心で、「こう答えれば必ずこうなる」とまでは言えません。
夕方の帰り道、「なんで?」が10回目
秋が深まり、日が暮れるのが早くなってきました。保育園からの帰り道や、夕ごはんの支度をしている台所で、「なんで暗くなるの?」「なんで葉っぱは赤くなるの?」と、お子さんの「なんで?」が止まらなくなることはありませんか。
こちらは疲れている時間帯。10回目の「なんで?」には、つい「そういうものなの」と返したくなる日もあると思います。それも、とてもふつうのことです。
今日は、そんな”なぜなぜ”について、研究者たちが何を調べてきたのかを、やさしくご紹介します。
3歳ごろは、1時間に76個の質問?
まず、質問の「数」についての研究です。2007年にアメリカの心理学者シュイナールさんが発表した研究では、家庭での親子の会話を長い時間かけて記録しました。対象は少人数の子どもたちです。
この研究をもとにした後の論文では、3歳ごろの子が「何かを知りたくて聞く質問」を、1時間に平均76個ほどしていたと紹介されています。
もちろん、これは調べた子どもたちの平均で、すべてのお子さんにあてはまる数字ではありません。おしゃべりが好きな子もいれば、じっと観察するのが好きな子もいます。質問の数が多い・少ないで、良し悪しがつくわけではありません。
ここで大切なのは、質問の中身です。小さな子の質問は、はじめは「これなあに?」のような名前を知りたいものが中心です。成長するにつれて、「どうして?」「なんで?」という理由やしくみを知りたい質問が少しずつふえていくと報告されています。
「なんで?」は、お子さんの頭の中で、世界のつながりを組み立てようとしているサインなのかもしれません。
「答え方」を調べた研究 ― 説明つきの答えと、そうでない答え
次に、パパ・ママにとって気になる「どう答えるか」を調べた研究です。
2009年に、アメリカのミシガン大学の研究チーム(フレイジャーさんら)が発表した研究は、2つの調査で行われました。
- 家庭での会話の分析:2〜4歳の6人の子どもについて、親やきょうだい、来客との日常会話の記録を調べました
- 実験室での会話:3〜5歳の42人の子どもに、おもちゃや絵本、動画を見せて質問してもらい、大人がいくつかのパターンで答えました
大人の答えは、大きく2つに分けられました。
- 説明のある答え:「葉っぱが赤くなるのは、寒くなると緑の色のもとが減って、赤い色が見えてくるからなんだって」のように、理由にふれているもの
- 説明のない答え:「秋だからだよ」「そういうものなの」のように、理由に答えていないもの
結果として報告されているのは、次のようなことです。
- 説明のある答えをもらった子は、満足したように見え、「そうなんだ」と受けとめるか、次の新しい質問をした
- 説明のない答えをもらった子は、物足りなそうに見え、同じ質問をくり返したり、自分なりの答えを言ったりしやすかった
研究チームは、「なぜ?」の質問は、会話をつなぐためだけではなく、本当に理解したいという気持ちから出ていると考えられる、と述べています。
「秋だからだよ」は決して間違いではありません。ただ、お子さんが「それだけじゃ足りないな」と感じているサインが、同じ質問のくり返しなのかもしれません。
自分で聞いたことは、覚えやすい?
もうひとつ、シュイナールさんらの研究から紹介されているのが、「自分でたずねて得た答えは、よく覚えている」という報告です。同じ情報でも、自分から聞いて教えてもらったときのほうが、あとからよく思い出せた、というものです。
この点は、「大人が教えたいことを一方的に伝える」より、「子どもの”知りたい”に合わせて返す」ほうが、お子さんの頭に残りやすいのかもしれない、というヒントになります。
ただし、「これで決まり」ではありません
とても興味深い研究ですが、受け止め方には注意も必要です。
- 小さな研究が中心:2009年の研究の調査人数は、研究者自身が「中くらいの規模」とのべています。すべての子どもにあてはまるかどうかは、まだ言い切れません
- 数は「平均」:76個という数字は、観察された少数の子の平均です。お子さんが少なくても、それぞれのペースがあります
- 「関連」の話:説明つきの答えが、のちの学びを良くするとまで確かめた研究ではありません。あくまで、その場の反応を調べたものです
- ご家庭の状況はそれぞれ:忙しい日に毎回しっかり説明するのは、現実的ではありません
この記事は「こう答えなければいけない」という話ではありません。「こんな研究がある」というヒントとして、読んでいただければ十分です。
今日からできる、小さな3つの工夫
研究から考えられるヒントを、できそうなものだけ選んで試してみてください。
- ひとことだけ、理由をそえる:長い説明は不要です。「寒くなると、葉っぱの色が変わるんだって」のように、ひとことの”理由”を足してみましょう
- 「どう思う?」と返してみる:すぐ答えが出ない日は、「なんでだと思う?」と聞き返すのもひとつの方法です。お子さんの考えが、思いがけないものだったりします
- 「わからない」は、そのまま言う:答えがわからないときは、「パパにもわからないな。いっしょに絵本で調べてみよう」と言って大丈夫です。わからないことを一緒に面白がる姿も、お子さんには伝わります
疲れている日は、「いい質問だね。あとでいっしょに考えようね」だけでも十分です。完璧に答える必要はありません。
気になることがあるときは、専門家に相談を
ことばの発達や、質問の多さ・少なさ、こだわりの強さなどで気になることがあるときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけの小児科や、お住まいの自治体の子育て相談窓口、保健師さんなどにご相談ください。この記事は一般的な研究のご紹介であり、個々のお子さんの状態を診断するものではありません。
Family Sitter 仙台より
私たちシッターも、お子さんの「なんで?」には、ひとことでも”理由”や”一緒に考える時間”をそえるようにしています。わからないときは、「なんでだろうね」と一緒にふしぎがります。
おうちでのお子さんの見守りや、パパ・ママがほっとひと息つく時間に、どうぞお気軽にお声がけください。
参考にした情報
- Frazier, Gelman & Wellman (2009)「Preschoolers’ Search for Explanatory Information Within Adult-Child Conversation」Child Development(ミシガン大学・ハワイ大学マノア校の紹介記事)
- Chouinard (2007)「Children’s questions: a mechanism for cognitive development」Monographs of the Society for Research in Child Development(後続論文 Lazaroff & Vlach 2022、Kurkul ら 2022 による紹介)
- Ronfard ら (2018)「Question-asking in childhood: A review of the literature and a framework for understanding its development」Developmental Review
この記事をシェアする