「すごいね!」のあとに、ひとこと足してみる ― ほめ言葉の研究から読み解く、”挑戦する気持ち”を育てるほめ方
「すごいね!」のあとに、ひとこと足してみる ― ほめ言葉の研究から読み解く、”挑戦する気持ち”を育てるほめ方
ざっくりいうと
- 子どもへの「ほめ方」には、心理学の研究がたくさんあります。有名なのは、「頭いいね」と才能をほめるよりも、「がんばったね」「工夫したね」とやり方や努力をほめたほうが、むずかしいことに挑戦しやすくなるという実験です。
- 1〜3歳の親子を家で録画して、5年後の姿と照らした研究では、ほめる回数ではなく、ほめ言葉の”中身”が関連していました。
- ただし、小さな研究が多く、「こうすれば必ずこうなる」とまでは言えません。この記事では、「わかったこと」と「まだ言い切れないこと」の両方をお伝えします。
秋の運動会や発表会シーズン、つい出る「すごい!」
運動会に、音楽会に、習い事の発表会。仙台でも、秋はお子さんががんばる姿を見る機会がふえる季節です。
できたときの「すごいね!」「えらい!」「天才!」。これは、お子さんを思う気持ちからごく自然に出てくることばで、まったく悪いものではありません。
ただ、「ほめ方」は心理学の世界で長く研究されてきたテーマでもあります。今日は、そのなかから有名な研究をいくつか選んで、パパ・ママが毎日の中で取り入れやすいヒントとして、やさしくご紹介します。
有名な実験 ―「頭いいね」と「がんばったね」
まず紹介したいのが、1998年にアメリカの心理学者ミューラーさんとドゥエックさんが発表した研究です。対象は、小学5年生くらいの子どもたち。6つの実験をまとめた論文です。
実験の流れは、おおよそ次のとおりです。
- 子どもたちに、比較的かんたんなパズルを解いてもらう
- 終わったあとに、グループによって違うほめ言葉をかける。「頭がいいんだね」と能力をほめるグループと、「一生懸命がんばったね」と努力をほめるグループ
- そのあと、次の課題を選んでもらう。「むずかしいけれど学べそうな課題」と「かんたんで失敗しにくそうな課題」のどちらか
- さらに、むずかしすぎる問題に取り組んでもらい、そのあとの様子を比べる
結果として報告されているのは、次のようなことです。
- 能力をほめられた子は、「かしこく見えること」を大切にして、やさしい課題を選びやすかった
- 努力をほめられた子は、新しいことを学べるむずかしい課題を選びやすかった
- むずかしい問題で失敗したあと、能力をほめられた子は、楽しさや粘り強さが下がり、次の成績も下がる傾向があった
- 能力をほめられた子は、「頭のよさは生まれつき決まっている」と考えやすい傾向があった
1〜3歳の「ほめ方」を、5年後まで追いかけた研究
「それは小学生の話では?」と思われるかもしれません。そこで気になるのが、もっと小さい時期の研究です。
2013年に、アメリカのシカゴ大学などの研究チームが発表した研究では、1歳・2歳・3歳のお子さんと保護者の、家でのふだんのやりとりを録画して、保護者のほめ言葉を分類しました。その後、お子さんが7〜8歳になったときに、次のような点を調べました。
- むずかしい課題とかんたんな課題、どちらを好むか
- うまくいかないときに、いろいろな工夫を考えられるか
- 「頭のよさや性格は、努力で伸ばせる」と思っているか
ほめ言葉は、次の3つに分けて数えられました。
- プロセスのほめ言葉:「がんばったね」「いろいろ工夫したね」など、努力ややり方に向けたもの
- 人についてのほめ言葉:「頭いいね」「いい子だね」など、その子の性質に向けたもの
- その他:「いいね」「上手」など
調べた結果、1〜3歳のときの保護者のほめ言葉のうち、プロセスのほめ言葉が多かった割合の高い子は、5年後に「挑戦に前向き」「くじけたときの工夫を思いつく」「努力で伸ばせると思う」という傾向がみられました。一方、ほめ言葉の合計の量とは関連がみられなかった、と報告されています。
つまり、「たくさんほめたかどうか」ではなく、「どんなことばでほめたか」のほうが、あとの姿と結びついていた、という内容です。
ただし、「これで決まり」とは言えません
とても有名で、わかりやすい研究ですが、受け止め方には注意も必要です。
- 小さな研究である:1〜3歳の追跡は、50組あまりの家族の研究です。ほめ言葉の分類も、研究者の判断で行われています。
- 「関連」であって「原因」とは言い切れない:ほめ言葉が結果を生んだと証明されたわけではありません。もともと、ことばかけの多いご家庭だった、など、ほかの要素が影響した可能性もあります。
- この考え方全体への議論もあります:ドゥエックさんが広めた「成長マインドセット(努力で伸ばせるという考え方)」について、30万人超のデータを集めた大規模な分析(2018年)では、成績との関連も、学校での取り組みの効果も、全体としては弱いと報告されています。一方で、経済的に厳しい家庭の子どもや、学習面で不安のある子には、助けになる可能性があるとも指摘されています。
つまり、この研究が教えてくれるのは「魔法のほめ方」ではなく、「ほめるとき、ひとこと添えるだけで、お子さんに伝わるメッセージが変わるかもしれない」という、ゆるやかなヒントだと受け止めるのがよさそうです。
もうひとつ ―「すごーい!」と大げさにほめると?
もうひとつ、おもしろい研究を紹介します。2014年に、オランダの研究者ブラメルマンさんたちが発表したものです。
研究では、ほめ言葉にひとつ言葉を足しただけで、どう変わるかを調べました。たとえば、「きれいな絵だね」と「とってもきれいな絵だね」。後者は”大げさなほめ言葉”と呼ばれています。
- 保護者がお子さんに算数の問題をさせる場面を見ると、ほめ言葉のおよそ4分の1が”大げさなほめ言葉”だった
- 自分に自信が持てないお子さんほど、大げさにほめられる傾向があった
- 240人の子どもにゴッホの絵を写してもらう実験では、自信が低めの子が大げさにほめられると、次はやさしい絵を選ぶ傾向がみられた。反対に、自信が高めの子は、むずかしい絵を選ぶ傾向がみられた
自信のない子を励まそうと思って、つい大げさに「すっごーい!」とほめたくなる気持ちは、とてもよくわかります。でも、大げさなほめ言葉が、お子さんには「次も同じようにできなくちゃ」というプレッシャーに聞こえることがあるのかもしれない、と研究者たちは考えています。
こちらも、課題は絵の模写など限られたもので、その場での実験です。一生のことまではわかっていません。
今日からできる、おうちでの”小さな3つの工夫”
特別なことは必要ありません。いつもの「すごいね!」を、ほんの少しだけ変えるイメージです。
- 「すごいね」に、「どこが」を足す:「すごいね!」のあとに、「最後まで続けたね」「色を工夫したんだね」など、目に見えたことをひとこと。
- 結果より、やり方や工夫を探す:できた・できないより、「何回も試してたね」「自分で考えたんだね」と、過程を見つけてみましょう。うまくいかなかった日も、「挑戦したこと」は伝えられます。
- 大げさなほめ言葉は、ほどほどに:「すごーい!」もうれしい気持ちの表現です。ときどき、やり方に目を向けたことばが混ざればそれで十分です。
「今日はそんな余裕ないな」という日は、「見てたよ」のひとことだけでも大丈夫。続けられる日に、できる範囲で。それでじゅうぶんです。
気になることがあるときは、専門家に相談を
お子さんの自信のなさ、強い不安、ことばや発達、お友だちとの関わりなどが気になるときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけの小児科や、お住まいの自治体の子育て相談窓口、保健師さんなどにご相談ください。この記事は、一般的な研究のご紹介であり、個々のお子さんの状態を診断するものではありません。
Family Sitter 仙台より
私たちシッターも、お子さんが何かをやり遂げたとき、「すごいね!」の後に、ひとこと添えるようにしています。「ここ、工夫したんだね」「最後まで続けられたね」。うまくいかなかったときも、「やってみたんだね」と、挑戦したことを認めます。
おうちでのお子さんの見守りや、パパ・ママがほっとひと息つく時間に、どうぞお気軽にお声がけください。
参考にした情報
- Mueller & Dweck (1998)「Praise for Intelligence Can Undermine Children’s Motivation and Performance」Journal of Personality and Social Psychology
- Gunderson ら (2013)「Parent praise to 1- to 3-year-olds predicts children’s motivational frameworks 5 years later」Child Development(シカゴ大学・テンプル大学の紹介記事)
- Brummelman ら (2014)「That’s not just beautiful — that’s incredibly beautiful!」Psychological Science(オハイオ州立大学・英国心理学会の紹介記事)
- Sisk ら (2018)「To What Extent and Under Which Circumstances Are Growth Mind-Sets Important to Academic Achievement?」Psychological Science
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