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「今日、なにして遊ぶ?」から始まる育ち ― 60年前の”幼児教室”の追跡研究「ペリー就学前プロジェクト」が教えてくれること

「今日、なにして遊ぶ?」から始まる育ち ― 60年前の"幼児教室"の追跡研究「ペリー就学前プロジェクト」が教えてくれること

「今日、なにして遊ぶ?」から始まる育ち ― 60年前の”幼児教室”の追跡研究「ペリー就学前プロジェクト」が教えてくれること

ざっくりいうと

  • 1960年代のアメリカで、3〜4歳の子どもたち約120人を「ランダムに」2つのグループに分けて、その後を長く追いかけた有名な研究があります(ペリー就学前プロジェクト)。
  • 教室の1日は「今日なにをするか決める → 思い切り遊ぶ → あとで振り返って話す」という流れ。先生が答えを教え込むのではなく、子どもが自分で選ぶことを大切にしていました。
  • 追跡の結果、大人になってからの暮らしにも違いがみられた一方、小さな研究ならではの注意点もあります。この記事では「わかったこと」と「まだ言い切れないこと」の両方をお伝えします。

秋のおうち時間、”次はなにする?”が多くなっていませんか

朝晩が涼しくなって、おうちで過ごす時間がふえるこの季節。「次はなにして遊ぶ?」「ママ、これやっていい?」と、お子さんに聞かれることも多いのではないでしょうか。

忙しいときほど、「じゃあこれで遊ぼうか」と大人が決めてしまいたくなるもの。それは自然なことで、決して悪いことではありません。

ただ、ちょっと立ち止まって考えてみたくなる研究があります。今日は、60年ほど前に始まり、50年以上追跡が続けられた「ペリー就学前プロジェクト」を、やさしくご紹介します。

ペリー就学前プロジェクトって、どんな研究?

舞台は、アメリカ・ミシガン州。1962年から1967年にかけて、経済的に厳しい家庭の3〜4歳の子どもたちが参加しました。人数はおよそ120人あまりです。

この研究のいちばんの特徴は、子どもたちをくじ引きのように(無作為に)2つのグループに分けたこと。ひとつは質の高い就学前プログラムを受けるグループ、もうひとつは受けないグループです。「もともと条件の良い家庭の子が参加しただけでは?」という疑問が出にくいように設計されている、研究としては貴重なものです。

プログラムの中身は、資格をもつ先生による平日午前の2時間半の教室と、週に1回、先生がご家庭を訪ねて親子と過ごす約1時間半の家庭訪問。先生ひとりに対して子どもは6人ほどと、じっくり関われる人数でした。

教室の1日は「決める → やる → ふりかえる」

この教室で使われていたのが、のちに「ハイスコープ」という名前で知られるようになる進め方です。1日の中心にあるのは、次の3つの流れでした。

  1. 計画の時間(10〜15分ほど):先生と話しながら、「どこで、何を使って、だれと遊ぶか」を子どもが自分で決めます。
  2. 活動の時間(45〜60分ほど):決めたことを実際にやってみます。途中で気が変わってもOK。先生は、教えるよりも、そばで見守って声をかけます。
  3. ふりかえりの時間(10〜15分ほど):先生やお友だちと一緒に、「何をして、何がわかったか」をお話しします。

ハイスコープの公式な説明では、この「計画」と「ふりかえり」の2つが、子どもの発達の進み具合ともっとも強く結びついていたと紹介されています。

ポイントは、遊ぶ前と遊んだあとの”ことばのやりとり”にあります。3〜4歳さんでも、「きょうはブロックでおうちをつくる!」と口に出して決め、あとで「これがいちばん大変だった」と話すことで、自分の気持ちや行動を少し離れたところから見る練習になるのです。

追跡でわかってきたこと

参加した子どもたちは、その後、40歳、さらに50代になるまで追いかけられました。40歳の時点では、まだ生きている参加者の97%に聞き取りができたといいます。

わかってきたことを、ざっくりまとめるとこんな感じです。

  • 5歳ごろには、プログラムを受けたグループのほうがIQ(知能検査の数値)が高め。ただし、9歳ごろには差は小さくなりました。
  • 一方で、成績や出席の状況、高校の卒業、大人になってからの就業や収入、犯罪の少なさといった点では、プログラムを受けたグループのほうがよい傾向が続いたと報告されています。
  • アメリカの研究チームは、費用に対する社会全体の見返りが大きいとの試算も発表しています(投資額の7倍以上という報告もあります)。

ここで面白いのは、「IQの差が消えたあとも、暮らしの差が残った」という点です。そのため研究者たちは、点数に表れる力だけでなく、やり抜く力・自分で決める力・人と関わる力のような、数字になりにくい力が働いたのではないか、と考えてきました。

ただし、「これで決まり」とは言えません

とても有名な研究ですが、鵜呑みにしないための”注意点”もあります。

  • 規模が小さい:参加した子どもは約120人。1960年代の、ある地域の研究です。
  • 条件が今と違う:対象は、経済的に厳しい環境にあった子どもたち。日本のいまの子育てにそのまま当てはまるとは限りません。
  • 評価が分かれる部分もある:研究を評価する団体によって、収入などの結果の受け止め方が異なります。「無作為の割り当てに、一部ずれがあった」と指摘する団体もあります。
  • 「ハイスコープ式にすれば将来が保証される」わけではありません:効果は、プログラム全体(先生の質、少人数、家庭訪問など)がそろっていた結果です。

つまり、この研究が教えてくれるのは「魔法のメソッド」ではなく、「子どもが自分で決めて、やってみて、振り返る」経験が、幼いころの育ちの大事な土台になりうるという、ゆるやかなヒントだと受け止めるのがよさそうです。

今日からできる、おうちでの”小さな3ステップ”

特別な道具はいりません。いつもの遊びに、ほんの少し「ことば」を足すだけです。

  1. 遊ぶ前に、ひとこと聞く:「今日はなにする?」「だれと、なにで遊ぶ?」。答えが「うーん」でも、「ブロック?お絵かき?」と2つ選択肢を出すのもおすすめです。
  2. 決めたことを、見守る:途中で変わってもそのまま。手や口を出したくなったら、まず3つ数えてみましょう。
  3. 遊んだあとに、ひとこと聞く:「どれがいちばん楽しかった?」「むずかしかったところは?」。上手に答えられなくても大丈夫。聞いてもらえること自体が、うれしい時間になります。

「今日はそんな余裕ないな」という日は、やらなくてかまいません。続けられる日に、できる範囲で。それで十分です。

気になることがあるときは、専門家に相談を

お子さんのことばの遅れや、お友だちとの関わり、落ち着きのなさなどが気になるときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけの小児科や、お住まいの自治体の子育て相談窓口、保健師さんなどにご相談ください。この記事は、一般的な研究のご紹介で、個々のお子さんの発達を診断するものではありません。

Family Sitter 仙台より

私たちシッターも、遊びの前後の「ひとこと」を大切にしています。「今日はなにして遊びたい?」と聞いて、お子さんが選んだことを、そばで一緒に楽しむ。終わったあとは、「どうだった?」とお話しする。そんな何気ない時間が、お子さんにとっての小さな”決める・やってみる・振り返る”の練習になれば、と思っています。

おうちでの遊びの見守りや、パパ・ママのひと息つく時間に、どうぞお気軽にお声がけください。

参考にした情報

  • HighScope(ハイスコープ教育研究財団)「Perry Preschool Project」および「Plan-Do-Review」の解説
  • NIEER(全米幼児教育研究所)「Lifetime Effects: The HighScope Perry Preschool Study Through Age 40」
  • Coalition for Evidence-Based Policy(エビデンス・ベースド・プログラムズ)「Perry Preschool Project」
  • 米国司法省 CrimeSolutions「HighScope Perry Preschool Project」
  • リセマム「ペリー幼児教育計画」に関する記事(2019年9月27日)

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