「ベビーシッター・家事代行はニーズがない」のではない
― “頼れない社会” が、親を追い込んでいる ―
昨日2026年5月11日、国会で「すべての子育て世帯に向けた支援」として、ベビーシッターや家事代行サービスの活用について議論されていました。
その中で、「ベビーシッターや家事代行はニーズがない」という趣旨の発言があり、私は強い違和感を覚えました。
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私は、この問題は「ニーズがない」のではなく、
“頼ることへの心理的ハードル” が極めて高いことに本質があると感じています。
家事や育児は、極端に言えば「頑張れば自分でできてしまう」ことです。
だからこそ、多くの親が、
- 自分でやるべきではないか
- 人に頼るのは贅沢ではないか
- まだ自分は頑張れるのではないか
そんな思いを抱えながら、限界まで無理をしてしまいます。
本当は心も身体も疲れ切っているのに、
「助けを求めること」に罪悪感を持ってしまう。
その結果、支援サービスが利用されず、
「利用されていない=ニーズがない」と誤解されてしまっているのではないでしょうか。
実際、厚生労働省やこども家庭庁も、産後の孤立やメンタル不調を重要課題として位置づけています。
厚生労働省資料では、産後ケア事業について、
「退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行い、産後も安心して子育てができる支援体制の確保」
が必要であると明記されています。
また、産後うつは決して珍しいものではなく、
国内外の研究では、約10〜15%の母親が産後うつのリスクを抱えるとされています。
さらに、日本産婦人科医会の調査では、
妊娠中または産後1年以内の妊産婦の死因として「自殺」が最も多いという深刻な現状も報告されています。
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2025/118149/childcare?utm_source=chatgpt.com
今回、参政党神谷代表より「10万円分のクーポンを配布し、各家庭が自由にサービスを選べるようにしたらよいのでは」という提案もありました。
もちろん、選択肢が増えること自体は良いことだと思います。
ただ、現状のままでは、多くの家庭はそのクーポンを、
- おむつ
- ミルク
- 子ども用品
- 教育費
など、“モノ” に使う可能性が高いと感じています。
なぜなら、日本ではまだまだ、
「親自身が楽になること」にお金を使うことへ、強い抵抗感があるからです。
でも本来、子育て家庭に本当に必要なのは、
“モノ” だけではありません。
親が少し眠れること。
安心して病院へ行けること。
美容室へ行けること。
ひとりで買い物できること。
誰かに「大丈夫ですよ」と言ってもらえること。
そうした「親の心と身体を守る支援」こそが、
結果的に子どもの育つ環境を整え、育児の質を高めることにつながるのだと思います。
実際に、厚生労働省の資料でも、
「妊産婦等の孤立化を防ぐソーシャル・キャピタルの役割」が重要であることや、
伴走型支援によって「孤立感が解消する」ことが示されています。
また、育児ストレスや母親のメンタル不調が、子どもへの関わり方や育児の質に影響を与えることも、海外のメタ分析研究で示されています。
https://arxiv.org/abs/1908.09968?utm_source=chatgpt.com
特に日本では、今なお、
「女性が家事・育児を担うべき」
「母親なのだから頑張るべき」
という価値観が、社会や家庭、親族関係の中に根強く残っています。
だから多くの母親たちは、
誰にも頼れず、歯を食いしばりながら子育てをしています。
私は、ベビーシッターや家事代行サービスは、
単なる“便利サービス”ではなく、
「子育てを社会全体で支えるためのインフラ」
だと思っています。
まずは公的支援として、多くの人が実際に利用し、
「頼っていいんだ」
「子育ては一人で抱え込まなくていいんだ」
そう感じられる社会にしていくことが必要なのではないでしょうか。
「ニーズがない」のではありません。
本当は助けを必要としている人がたくさんいる。
ただ、“頼れない空気” が、日本にはまだ強く残っているのだと思います。
株式会社キューテスト
代表取締役 中原絵梨香
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