「てつだう!」は、いつから始まる? ― 1歳半の”助けたい気持ち”を、研究からのぞいてみました
「てつだう!」は、いつから始まる? ― 1歳半の”助けたい気持ち”を、研究からのぞいてみました
ざっくりいうと
- 18か月ごろの子どもたちに、大人が「手の届かないところに物を落として困っている」ようすを見せたところ、ほぼ全員が1回は拾って渡したという研究があります(ドイツ・マックスプランク研究所、2006年)。
- 20か月ごろの子で、手助けのあとに”おもちゃのごほうび”をもらった子は、その後の手助けが少なくなったという報告もあります。ほめ言葉だけの子や、何ももらわなかった子では、減りませんでした(2008年)。
- ただし、実験室での短い観察です。「ごほうびはダメ」「こうすれば必ず育つ」という話ではなく、ヒントのひとつとして読んでみてください。
「ママ、これ持つ!」がはじまった日
秋が深まり、取り込んだ洗濯物をたたむ時間が増えてきました。そんなとき、小さなお子さんが「やる!」と寄ってきて、タオルをぐちゃぐちゃに運んでくれたり、お皿をひとつだけ並べてくれたりした経験はありませんか。
正直なところ、自分でやったほうが早い日もあります。疲れている夕方は、なおさらです。それもとてもふつうのことだと思います。
今日は、そんな「てつだいたい」の気持ちについて、研究者たちがどんなことを調べてきたのかを、やさしくご紹介します。
1歳半の子は、頼まれなくても手を差し出す?
まずは2006年に、ドイツのマックスプランク進化人類学研究所のワーネケンさんとトマセロさんが、科学誌『Science』に発表した研究です。
実験は、とてもシンプルなものでした。大人が洗濯ばさみで洗濯物を干しているとき、うっかり洗濯ばさみを落とします。手を伸ばしても届かないようすを見せますが、子どもに「取って」とは言いません。目を合わせることもなく、お礼やごほうびも用意されていませんでした。
対象は、18か月ごろの子どもたち。おむつがとれていない子も多く、ことばもまだ少ない時期です。
報告されている結果は、次のとおりです。
- ほぼ全員の子が、少なくとも1回は洗濯ばさみを拾って渡した
- 約84%の場面で、大人が目を合わせる前の10秒以内に手助けを始めた
- 大人がわざと投げた物は、拾わなかった(本当に困っているときだけ助けた)
研究者のワーネケンさんは、「これほど小さな子で見られたことが驚きだった」という趣旨のコメントをしています。
「わざと投げた物は拾わない」という点は、とても興味深いところです。子どもたちは、ただ物を拾うのが好きなのではなく、「この人はいま困っているのかな」と、まわりのようすを見て判断しているのかもしれません。
「ごほうび」をもらうと、どうなる?
もうひとつ、パパ・ママにとって気になるのが、「お手伝いしたら、ごほうびをあげるべき?」という点ではないでしょうか。
2008年に、同じ研究者らが『Developmental Psychology』に発表した研究では、20か月ごろの子どもたちを次の3つのグループに分けて調べました。
- 手助けのあと、おもちゃのごほうびをもらうグループ
- 手助けのあと、ほめ言葉(社会的なほめ)だけをもらうグループ
- 手助けのあと、何ももらわないグループ
そのあと、ごほうびなしの場面で、もう一度手助けをするかどうかを見たところ、おもちゃのごほうびをもらっていた子は、ほかの2つのグループにくらべて、手助けをする割合が下がったと報告されています。
研究者たちは、これを「過剰正当化効果」と呼んでいます。もともと「やりたくてやっていたこと」に、ごほうびがつくと、「ごほうびのためにやること」に変わって、元の気持ちがしぼんでしまうことがある、という考え方です。
一方で、ほめ言葉だけをもらった子や、何ももらわなかった子では、手助けは減りませんでした。
ただし、「これで決まり」ではありません
とても印象的な研究ですが、受けとめ方には注意も必要です。
- 実験室での短い観察:ご家庭での毎日のお手伝いとは、状況がちがいます。ここでの「手助け」は、物を拾って渡すなど、ごく短い行動です
- 「ごほうびは絶対にダメ」という話ではありません:お子さんの年齢やご家庭の方針によって、お小遣いやシールなどを使うことが役に立つ場面もあります。この研究は、ごく小さな子の自然な手助けに限った報告です
- 長い目で見た効果は、まだわかっていません:手助けが減ったのは、その直後のテスト場面のことです。成長してからどうなるかまでは、言い切れません
- 子どもによって、ちがいがあります:やりたがる子もいれば、見ているほうが好きな子もいます。手伝いの多い少ないで、良し悪しはつきません
この記事は「こうしなければいけない」という話ではありません。「こんな研究がある」というヒントとして、読んでいただければ十分です。
今日からできる、小さな3つの工夫
研究から考えられるヒントを、できそうなものだけ選んで試してみてください。
- 急ぎでない日は、やらせてみる:時間にゆとりのある日だけで大丈夫です。多少ぐちゃぐちゃでも、「やりたい」を受けとめるチャンスです
- モノより、ひとことで伝える:「助かったよ、ありがとう」「やってくれて、うれしいな」と、気持ちを言葉にしてみましょう。研究でも、ほめ言葉だけの子は手助けが減りませんでした
- うまくいかなくても、直さない:タオルがななめでも、お皿が重なっていても、まずは「やってくれたこと」を受けとめてみてください
疲れている日は、見守るだけでも十分です。「今日は、ママがやるね。見ていてね」でも大丈夫。完璧を目ざす必要はありません。
気になることがあるときは、専門家に相談を
ことばや行動の発達、お子さんの「やる気」や意欲などで気になることがあるときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけの小児科や、お住まいの自治体の子育て相談窓口、保健師さんなどにご相談ください。この記事は一般的な研究のご紹介であり、個々のお子さんの状態を診断するものではありません。
Family Sitter 仙台より
私たちシッターも、お子さんが「やりたい!」と寄ってきてくれたときは、できるだけ急がせず、「ありがとう、助かったよ」と声をかけるようにしています。できた・できないより、「やってみたい」の気持ちを大切にしたいと考えています。
おうちでのお子さんの見守りや、パパ・ママがほっとひと息つく時間に、どうぞお気軽にお声がけください。
参考にした情報
- Warneken & Tomasello (2006)「Altruistic helping in human infants and young chimpanzees」Science(マックスプランク協会のプレスリリース、ScienceDailyの紹介記事)
- Warneken & Tomasello (2008)「Extrinsic rewards undermine altruistic tendencies in 20-month-olds」Developmental Psychology 44(6), 1785–1788(デューク大学の論文データベース、論文要旨の紹介)
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